2024.10〜
劣化せぬ 我が想ひ出も 君の影 20℃±2℃/RH55%(保存環境)は かくも脆く
求むれど 返らぬ文は 虚しきか 記録と共に 君も遠のく
いかにして 願ふこころを 知る由も 紙魚に喰はらるか 我が番号無く
時過ぎて 錆びたる想ひも 処理されし 遺物のごとく 君の道映ゆ
アーカイヴに 収まらぬ我が 心かな 修復願ふも 君は答へず
誰が見し この遺物らの いにしへよ 錆をとどめて 光を宿す
酸化する 便箋に似たる 我が恋は 安定化処理も 君に届かず
ひび割れし 油画の如く 君もまた 剥落どめなき 想ひ崩ゆる
装潢師の 手を離れたる 文書のごとく 我が行き先は 誰に委ねむ
君がため 尽くせぬ日々の 悔しきを いま赦し請う ただ声を待つ
車椅子 不自由なれども 踏み出せし 長き闇夜に 我も泣きぬる
望月を 見むと誓ひて 足止むる きざはし高く 心のみ飛ぶ
忘らるる ことなきやとぞ 願ふなり 孤独なる夜 共に歩まむ
ひとりなる 君が背には 古文書を 繕いたるごと 我が想ひあれ
責めは負へど 権(けん)を賜(たまは)らぬ 哀れなり さすがは君の 導きし道
わが魂を 半ばにわけて 君にやらば 末の秋にも 羽音楽しめ
我が命 わけむとぞ思ふ そら鳥娘よ 君が生くる日 我より長く
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